目白大学留学生別科非常勤講師
元(財)海外技術者研修協会(AOTS)
木戸恵子
『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ』は、職場・家庭・学校・地域などで日本語によるコミュニケーションを今すぐ必要としている外国人の皆さんが初級の日本語学習が楽しく進められるように様々な工夫がされています。
1.教科書全体の構成
『みんなの日本語初級Ⅰ』は第1課から第25課、『みんなの日本語初級Ⅱ』は第26課から第50課までの構成です。
易しい文型から難しい文型へ学習を進める文型積み上げ方式で、前の課までに習った語彙や文型を使って、新しい課の学習項目を紹介(導入)・練習できるようになっています。
また、語学学習は何度も復習することが大切なので、5、6課毎に復習問題が、巻末に文法項目毎のまとめと例文が掲載されています。
2.各課の構成
各課の構成は次の通りです。
この構成は第1課~第50課まで統一されています。
3.具体的な教え方(授業の流れ)
実際に教える時は、1ページ目からページに沿って教えるのではなく、文型毎に導入と練習を繰り返した方が効果的です。
会話は、基本的にはその課の最後に勉強します(授業の流れ①)。
しかし、学習者にその課の新しい文型や表現に気づいてもらい、学習項目を意識してもらうために文型を導入する前に会話を紹介することもあります(授業の流れ②)。
授業の流れ②については次回以降にご紹介します。
4.第16課の学習項目「〈て形〉+から、~」(文型2)の基本的な教え方について考えてみましょう。
文型2.コンサートが終わってから、レストランで食事をしました。
まず、この学習項目に該当している文型、例文、練習A、B、Cを拾い出します。
教科書の該当箇所に星印があります。
新出語彙についても練習で使う語彙を選び出しておきましょう。
新出語彙は、『みんなの日本語初級Ⅰ翻訳・文法解説』にリストアップされ、10カ国語に翻訳されています。
『みんなの日本語初級Ⅰ 翻訳・文法解説英語版』より
各課で覚えなければならない語彙はかなり多いので、学習項目(文型)毎に何回かに分けて語彙を紹介し、学習者の負担を少なくしましょう。
(1)新出語彙の導入
まず、絵カードで意味を確認し声に出して練習し覚えます。
それから、動詞の場合は助詞、グループ分け、〈て形〉などを確認し、例文を提示します。
新出語彙を使ってQAをするのもいいでしょう。
入れます |
出します |
入ります〔大学に~〕 |
出ます〔大学に~〕 |
『みんなの日本語初級Ⅰ絵教材』より
(2)導入
できるだけ学習者の日常生活の場面を使って、説明します。
このような導入を二つぐらい準備しておくといいでしょう。
(3)練習A2&B3、4
『みんなの日本語初級Ⅰ』レベルなら、教科書を見ないで、教師が口頭で指示したり、イラストを見せたりして、練習を進めることができるでしょう。
教科書に掲載されている問題だけではなく、学習者に合わせて自分で問題を作成したり、問題の形式を工夫したりしましょう。
『みんなの日本語初級Ⅰ導入・練習イラスト集』より
例: T: 毎日
S: 毎日 うちへ帰ってから 宿題をします。(①)
T: 昨日
S: 昨日 うちへ帰ってから、テレビを見ました。(②)
教師は、「毎日」、「きのう」、「いつも」などを口頭で指示して、文末の時制をコントロールするのもいいでしょう。
(4)練習C2
『みんなの日本語初級 練習C・会話イラストシート』のイラストを使って説明、練習します。
例文を説明する際に「いいえ、まだまだです。」という表現を導入します。
一通り練習が終わったあとに、学習者の状況に合わせて練習を加えてもいいでしょう。
また、A:「日本語が上手ですね。」の「日本語」の部分を、実際に学生が上手なもの(例: 絵、料理、絵など)に変えて応用練習をします。
以上が『みんなの日本語』の基本的な教え方です。私が授業をする場合ですが、実物やイラストなどを活用し、できるだけ文字情報に頼らないように教科書はほとんど見ません。授業の終わりに学習者とともに教科書を開き、文型、例文を読み、学習したことを確認をしています。なお、各課の詳しい導入や練習方法は『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ教え方の手引き』に導入や練習方法が掲載されています。
『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ教え方の手引き』に導入や練習方法が詳しく載っています。
次回は、練習B、練習Cなどを中心に練習問題のアレンジ例をご紹介します。
参考: 『みんなの日本語初級 教え方の手引き』