国際善隣学院 教務主任 鈴木 英子

2010年に改訂された新試験で、漢字力は「課題遂行能力」を支える言語知識(文字・語彙・文法)の一つとして位置づけられています。
『完全マスター漢字2級レベル』『同1級レベル』の改訂版である本書は、改訂に際して、旧「出題基準」に準拠した漢字と漢字語のレベルを部分的に再検討しました。
また、新試験が求める「課題遂行能力」を支える言語知識としての漢字力・それを育てるための漢字語と漢字学習についても再考しました。

1.読解力を支える漢字力を養うために

漢字は読むこと(と書くこと)でこそ必要であり、読解力の大きな鍵になっています。
私たちは、漢字学習の前提として、「漢字は語の表記のためのものであり、語の意味の理解なくして漢字の学習はない」「日本語学習者は多くの場合、語の学習と漢字表記の学習をほぼ同時にしなければならない」「現実の言語活動を支えるために、知らない言葉に出合ったときに応用できる漢字力が必要である」と考えており、本書では以下の点を心がけました。

①機械的な書き取りや読み仮名を書く練習ではなく、考えて漢字を使う練習ができること。単に読み方を覚え込むのではなく、言葉の意味を理解して語として学ぶ学習ができること。

②日本語学習者が身につけるべき知識をできる限り厳選して、系統的に学習項目を配置し、効率的な学習ができるように配慮すること。

③未知の漢字の言葉に出合ったときに、持てる漢字の知識を駆使して読んだり意味を理解したりできる力、既知の言葉に、接辞的に働く漢字を加えたりできる力を養うための知識と練習を系統的に導入すること。さらに、読解で漢字の言葉を利用しながら読む練習を加えること。

2.本書を使っての漢字学習

『N2』では、N2相当の語を表記するのに必要な漢字の中から、使用頻度が高い・造語力がある・他の漢字の扁など構成部分になる漢字、1046字を3つのステップに分けて学びます。

字音語の熟語は、既習漢字のみで作られるものに限定してあります。
漢字リストで予習をして、練習問題で文の中で使って身につけます。
漢字仮名交じり文が自然に書けるようにするためのディクテーションも含め、練習は答え合わせをして必ず自分で直すこと、漢字リストの学習により未習の語をチェックすること、リストに載っていない語はあえて触れないことに留意してください。

『N1』では、N1相当の語を表記するのに必要な漢字を訓読みと音読みに分け、それぞれ品詞や分野で関連付けて学びます(音訓の統合は音読みの部分で)。

学習のページと漢字リストで、語としての理解と読み方を学習します。
訓読みのところでは音読みにはあえて触れないこと、特に非漢字圏の学習者は音読みで語の意味をしっかり学習すること、いたずらに熟語を拡張しないことに留意してください。



日本語においては、言語的な視覚情報を素早く処理するのに漢字力が不可欠です。
本書を通じて、ぜひ実践的な漢字力を身につけていただけたらと願っております。