『サードカルチャーキッズ』
の翻訳者のお二人が、サードカルチャーキッズの母親としての日常的な視点と、
研究者としてのアカデミズムの観点、の2つの立場から
「サードカルチャーキッズの今!」をお届けします!

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日部八重子

 

前回は夫の急な転勤に伴うバタバタ状態をお話ししました。

この2ヶ月の間にアメリカから日本への引っ越しを済ませ、子どもたちも新しい学校に通い始めました。

長男の学校選びですが、もし学校が見つからなかったら夫に転勤の話を断ってもらわないといけない、と思いつめていましたが、最終的に2校から受け入れ許可の連絡をもらいました。

そして長男は共学・無宗教のインターナショナルスクールを選びました。

子どもと一緒に学校を訪問することはとても大切だと思います。

「どうしてこの学校を選んだの?」と聞くと「ふうん、そんなことで?」と私がつい言ってしまうような理由を挙げるのですが、言葉では表現できない体で感じる部分があるようです。

たとえば、そこにいる生徒たちの様子や表情・学校事務や先生たちの様子、といったものでしょうか。

そして学校に通い始めて約2ヶ月。長男は水を得た魚のように楽しんでいます。

本書の中で、TCKは人との交流の深いレベルまで一気にジャンプしてしまう傾向があるとありますが、まさのその通りで、各国から集まってきたクラスメートたちに初日から溶け込み、長男はすぐに心を開きました。

急がなければ次の移動になってしまう、そんな切迫感から社交辞令を省いてすぐに深い感情レベルの関係に進展するTCK、長男は今、一日一日を大切に過ごしています。

やっと同じようなバックグラウンドの仲間に迎え入れられた長男、浮き足立つのはいいのですが、気になる発言もあります。

恋焦がれて帰ってきた日本のはずなのに、時々、日本・日本人に対するバッシングの言葉がつい口を衝いて出てくるのです。

他人に対する苛立ちや見下した態度によって自らのアイデンティティーを認識するTCK、自分たちは特別なのだと時々勘違いしてしまうことがあります。

確かにTCKは多国語を操ったり、様々な経験をしてきたり、年の割には知識が豊富かもしれません。

一つの国に留まっている同年代の人たちよりも幅広い見方ができるでしょう。

でも「知識の豊富さ」=「知識の高さ」ではないのです。

その点を長男にも気づいてほしいと思います。

ただ、他人へのバッシングはアイデンティティーの揺らぎ・不安の表れでもあるので、慎重に様子を見ていきたいと思います。

さて、次男・三男はリセ東京(フランス人学校)に通い始めたのですが、それぞれ適応過程です。

本書「あとがき」にも書きましたが、次男は性格的に思い悩むといったことがあまりなく、今回も比較的すんなりと日本の生活に移行したように見えます。

アメリカ・ニュージャージーではフレンチスクールに通い、英仏バイリンガル教育だったので、こちらのフランス人学校でもバイリンガルクラスに編入しました。

英語話者が多かったアメリカに比べ、フランス語話者が多い東京では、多少フランス語のレベルが高いようですが、ストレスを感じるほどではないようです。

でも、これは性格によるものがとても大きいように思います。

日本語補習校に通っていたこともあり、毎日一時間の日本語クラスも問題なくこなしています。

三男はアメリカで英語オンリーの保育園に通っていたので、突然のフランス語環境にとまどっています。

フランス語の授業の日には毎日泣いているようです。

ただ先生方も手慣れたもので、バイリンガルクラスにおいては、不得意な言語の日に子どもは不安になるけれども、たいていの子どもは数ヶ月で適応するので大丈夫、と環境・事情をよく把握してくださっています。

夫は新しい職場で日本人の同僚と働き始めました。

さて私ですが、自分の国へ戻ってきたとはいえ、駐在生活のスタイルは、英語の通じる歯医者探しに始まるなど、以前の生活とはずいぶん異なります。

また収入はいまだにアメリカなので、日本への送金問題など煩雑な手続きも残っています。

日本の運転免許証はアメリカ在住の間に失効していて、身分証明もできません。

日本の生活を100パーセント満喫できるようになるまでには、まだちょっと時間がかかりそうです。