講師:明海大学外国語学部 応用言語博士 西川寛之


教科書の使い方を考える時に、どこで使うのかを考えることはどの教科書でも重要なことです。今回は、数か月から1年間程度、日本語の勉強に集中して生活する人々、例えば留学生や研修生に教えるときの使い方を考えます。


よく耳にするかもしれませんが「教科書を教えるのではなく、教科書で教える」という言葉があります。これを実践するには教科書のことを知る必要があります。多くの教科書には「まえがき」や「使い方」などが本課に入る前にあります。「まえがき」などには教科書を知るための情報があるので必ず読んで使ってください。   

『みんなの日本語初級Ⅰ第2版本冊』の場合は、本課に入る前の「効果的な使い方」に説明がありますが、学習項目ごとに授業を進めることが重要です。そして、そこで学んだ学習項目をどのようにコミュニケーションの中で使うのかを、目の前の学習者に合わせてアレンジすることは私たち日本語教師の仕事であり、腕の見せ所でもあります。


●コミュニケーションにつなげるテキスト活用法 
では、『みんなの日本語初級Ⅰ』の6課を例に見てみます。

6課に入るまでには「~ます」の4つの形を勉強しています。「~ます」「~ません」「~ました」「~ませんでした」に加えて質問する表現を作るための「(ます)か」を勉強しています。そして、6課では新しく「~ませんか」という表現を勉強します。5課までは事実を確認する会話が中心で、6課になると、人を誘う(「一緒に行きませんか」)、提案する(「10時に会いましょう」)といった、相手に働きかける表現が出てきて、コミュニケーションの幅が出る重要な課です。

この稿では6課の「~ませんか」を使うまでの学習の中で、他の人とコミュニケーションをとろうとする姿勢を作る授業の流れをご紹介します。

各課のはじめにある「文型」から学習項目を見ると、6課では練習Aに5つの文型が提出され、これらを1つずつ勉強していきます。