八島 晶(『極めろ!TOEIC L&R TEST 990点リスニング特訓』著者)

1.満点リスニング講座
私はビジネスパーソンとしての本業の傍ら、企業や大学でTOEICの講師をしています。これまでに約6,000名の受講者と向き合って、スコアアップのお手伝いをしてきました。講座は保有スコア別に分けられていて、初級(600点目標)、中級(730点目標)、上級(860点目標)、そしてその上に満点を目指す満点講座があります。満点講座はさらに満点リスニング講座と満点リーディング講座に別れ、参加希望は満点リスニング講座の方が圧倒的に多いです。受講者が講座に参加する目的はスコアアップですが、同時に英語が話せるようになりたいと思っており、話せるようになるためにリスニング力をブラッシュアップしたいという思いがあるからです。

受講前平均 受講後平均 満点到達
375.1 465.8 113/320

このデータはその満点リスニング講座のこれまでの実績を示しています。「受講前平均」は受講者が過去に取得した最高スコアの平均、「受講後平均」は講座を受けた後に出した最高スコアの平均、「満点到達」は受講後に何人の人がリスニング満点(990点)を取得したのかを示しています。

この講座は基本的には企業、大学の内部で行われており一般の募集はしていないのでこの場をお借りして、どのようなコンテンツを使って講義を展開しているのかを紹介させていただきます。

2.リスニングの基礎力を上げるトレーニング方法
講座では問題演習をした後、いきなり答え合わせをしないで音声ファイルを流し直してディクテーションをしてもらいます。ディクテーションとはスクリプトを見ないで聞き取った英語を書き取るトレーニングです。1度で聞き取れなければ、2度、3度と繰り返して、これ以上聞き取れない段階で答え合わせをして、自分が書き取った英語とスクリプトを突き合わせることで、自分が聞き取れない単語、フレーズを自覚することができるようになります。

この時、私は問題の解説に加えて、受講者が聞き取れなかった単語、フレーズについて聞き取れない原因、聞き取るためのコツを説明するようにしています。

While I was reviewing it.

この英文は語数が短く、難しい単語は一切使われていませんが、パート2の正解の選択肢として出題すると聞き取れない受講者がかなりいます。ディクテーションをしてもらうとwhileが聞き取れていないのです。ここで、受講者はこんな基本単語が聞きれていなかったのか!と驚かれます。聞き取れない原因はこの単語の音をカタカナ英語の「ホ・ワ・イ・ル」で覚えているからです。正しい英語の音は/waɪl/で音もカタカナ英語とも全く違いますし、音節もカタカナ英語が4音節なのに対して正しい英語の音は1音節です。

その後、スクリプトを伏せてもう一度音声を聞き直してもらいます。弱点の箇所は認識できているわけですから、自然と注意力を上げて精聴するようになり、この瞬間に正しい英語の音として自分の耳に染み込んでくるのです。基本単語はそれだけ出現頻度が高いわけですから、聞こえなかった基本単語が聞き取れるようになればそれだけでもリスニング力はぐんと上がります。

3.浮かび上がってきた学習者の弱点
1回の授業が終わると、全ての受講者が書き込んだディクテーションの用紙を回収して、聞こえなかった箇所、何と聞き間違えたのかを分析しています。また、どの単語が聞こえていないとどの設問の解答に影響が出て、どの誤答に誘導されてしまうのかも分析しています。この作業を地道に積み重ねることで受講者の共通の弱点が浮かび上がってきました。そして、そのデータを教材に盛り込み、講座で使用することで効率的に受講者の弱点補強ができるような講義を展開しています。

また、その教材によって新たにわかったのは、学習者の共通の弱点は本番のテストでも繰り返し出題される定番問題にも盛り込まれているということです。つまり、TOEICの問題作成者がリスニングセクションで問うているのは、学習者共通の弱点が聞き取れているのかどうかなのです。

この度、これまで私が満点リスニング講座で得られた知見をより多くの学習者の方々にフィードバックするために、スリーエーネットワークから『極めろ!TOEIC L&R TEST 990点リスニング特訓』として上梓することができました。満点リスニング講座で出題、解説している項目はほぼすべて網羅されており、講座の中で実践しているトレーニング方法も「解説&トレーニングポイント」という項で掲載しています。

4.難化したリスニングセクションに対応
私は今でもTOEIC公開テストを毎回受験し、新しいタイプの問題が出題されているか、出題傾向の変化などを調べています。2019年頃からリスニングセクションは難化傾向にあり、以前よりもスコアが出にくくなりました。初中級ではさほど影響がないのですが、上級者ほどその影響を受けています。これは想像を含みますが、難易度を上げることで上級者のスコア分布を均一にして、より正確にリスニング力の測定ができるように改善を図っているのではないでしょうか。

難易度が上がったのはナレーターの発話スピードが以前よりも速くなったのが原因の1つです。特にオーストラリア人男性、イギリス人女性のナレーターが早口になりました。その早口のナレーターが学習者の弱点を含む英文を担当するようになりました。

Where will the opening celebration take place?

WH疑問文の中でwhereは聞き取りの難易度が高めですが、それにwillを組み合わせるとさらに難易度が上がることは満点リスニング講座を通しての分析で明らかになっています。そして最近の傾向ではこのパターンを早口のイギリス人女性や、オーストラリア人男性に読ませるようになりました。

本書ではこのようなリスニングセクションの難化傾向に対応できるよう、音声ファイルの制作にあたっては、本番で出題されるのと同等の発話スピードでナレーターに話してもらいました。機械的な編集で速度を速めることもできるのですが、収録の際に早めに話してもらうことで英語の音の変化、脱落が自然に起こるよう工夫をしています。

本書はパート1(1問)、パート2(5問)、パート3(3問)、パート4(3問)を1セットとして、計50セットの問題が収録されています。これらの問題を解くことで学習者共通の弱点を克服し、新傾向のナレーターにも対応できるように構成されていますので、リスニング満点を目指している方、安定してリスニング満点を取れる実力を養いたい方は是非、ご利用ください。

八島 晶先生のプロフィール
外資系ソフトウェア会社に勤務する現役ビジネスマン。TOEIC®L&Rテスト満点。AERA English誌が選出する「7人のTOEICカリスマ講師」の1人。全国通訳案内士。全日空グループ、楽天などで「TOEIC®スコアアップ講座」の講師を務め、受講者はのべ6,000名を越える。「キモチを込めた音読」「耳慣らしストレッチ」「パーフェクト予測先読み」など独自のメソッドを取り入れた指導を展開している。
主な著書に『TOEIC® L&R テストの英語が聞こえるようになる本』『TOEIC® L&R テスト 600点奪取の方法』(旺文社)、『TOEIC® L&R TEST サラリーマン特急 新形式リスニング』(朝日新聞出版)、『出るとこ集中10日間! TOEIC® テスト 文法編』(西東社)などがある。好物はどら焼き、ナポリタン。特技は皿回し。

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