山内勇樹(『極めろ! TOEFL iBT® テスト スピーキング・ライティング解答力』共著者)

TOEFL iBT テスト100点を目指している人は、100点が取れない

TOEFL iBTテストで100点を本気で目指すのであれば、105点を目標にしましょう。矛盾しているようですが、現実的には矛盾していません。100点が目標だと、RLSW全てのセクションで出せたとしても100点ギリギリがやっと取れる、という勉強の仕方になってしまいます。そして全セクションでベストパフォーマンスいっぺんに勢ぞろい、は非現実的です。100点を取りたいなら105点を目指しましょう。そう本気で考え本気で進みましょう。ちなみに、105点のスコア配分でよく見られるのは、Reading 28, Listening 26, Speaking 24, Writing 27です。各セクション、最低でもこのラインを目指して対策していく、というのが現実的な目標設定です。

Speaking, Writing は独学でスコアが伸ばしにくい?

Reading, Listening は独学で勉強を進めやすい側面が多いと言えます。単語を覚えたり、問題を解いて傾向をつかんだり、聞く練習をしたりというのは一人でできる範囲が大きいからです。一方で Speaking, Writing は個人の努力だけで伸ばすのが難しいセクションと言えます。どうやったら流暢に話せるのか、減点されるのはどんなポイントで、その克服のためにどういう練習が重要なのか、自分の書いている英文は分かりやすく文法的に正確か、など自分一人では判断できない項目が多いからです。

TOEFL Speaking, Writing の劇的な伸ばし方

独学で対策が難しい Speaking, Writing にも効果的な勉強方法があります。それは、短期間で点数をアップさせている受験者が行っている練習方法の「リピーティング」です。Speaking であれば模範解答のスクリプトをそのまま「復唱」します。Writing であれば、模範解答をそのまま「書き写し」します。


こうした模範解答をリピーティングすることが有効です。特に、英語を使って生活するという経験がない又は少ないと、そもそも英語を(カレッジレベルで)どう話すのか、どう書くのか知りようがないですし、自分の文章が文法的に正しくかつ論理的で分かりやすいものになっているか、という判定ができません。自分では判定できない、自分で発明することはできない、という状況で取れる最善の策は「マネする」です。模範解答を「リピーティング」、最善な英語の話し方、書き方に慣れましょう。

また、高得点者の模範解答には、その点数を出すに値する「全体の構造」「バランス」「展開や流れ」「論理性」「分かりやすさ」「語彙」「表現の多彩さ」があります。文章を単に作る、ということだけではなく、これらの要素を総合的に体得するために、模範解答をリピーティングすることで、短期間で得点アップが可能となります。

『極めろ! TOEFL iBT® テスト スピーキング・ライティング解答力』には、高得点者の模範解答が多く掲載されています。この模範解答を使って、復唱と、書き写しからスタートしてみましょう。

「さっと」使える表現・単語を増やそう!

Speaking においてもWriting においても、とっさに使える表現や単語がどれだけあるかで、その人の Speaking力、Writing力が決まります。瞬間的に使えなければいけません。特に Speaking では時間が待ってくれないので、使える表現や単語に限りがあると、「ああ」、「んー」、空白、という減点要因が多くなります。Writingでは、単調になったり、単語数が出せなくなってしまうでしょう。「さっと」使える表現や単語を増やしていくことが、着実なスキルUPの一歩となります。

「さっと」使える表現・単語を増やす具体的な方法は、「知っているけど自分がさっと使えるまでなっていない」という表現・単語を、模範解答から引っ張ってきて、その表現・単語を使う(話すor書く)練習をします。

例えば、この解答の中で、以下のような表現にターゲットを絞ります:
● those who are ~ 「~の人」
● result in ~ 「~という結果になる」
● be left unsolved 「解決されないまま残る」
● concerning ~ 「~についての」
● intervene ~ 「間に入る」

全て知っているかというと、知っています。では、「さっと」瞬間的にこれらを自分のスピーチの中で使えるかというと、瞬時には出てこないものがあるかもしれません。こうした表現・単語を、話す練習や書く練習の中で率先して使ってみましょう。使うことで使えるようになります。

最初の those who が使えるようになると、毎回 people people, someone someoneと言わなくてもいいので、表現のレベルが多様化し、表現力を向上させることができます。

「さっと」使える表現・単語を着実に増やしていきましょう!

『極めろ! TOEFL iBT® テスト スピーキング・ライティング解答力』の模範解答から、自分が使えるようになりたい表現・単語をどんどん盗んでいってください。

聞き手・読み手の視点で考える

Writingでは、特に、書き手はこれでいいと思って書いている、読み手は意味が取れない、という「書き手VS読み手」の理解の相違がよく起こります。書く側は、頭の中にシナリオや情景があるので、その言葉で話が理解できますが、読み手はそうしたイメージは一切なく、目の前にある文字だけを読んで理解します。常に読み手目線で自分の文章をチェックできるかは、上級者には常に持っておくべき視点です。

例題:
Government should provide more funds to artists and their activities. Agree or Disagree?
(政府はアーティストやその活動にもっと資金を出すべきだ。賛成ですか、反対ですか)

解答例:
The first reason for my agreement is that artists have been around us for centuries. Without funds, they cannot continue working. The culture itself may get lost, and once it’s lost, we cannot retrieve it. For example, …

書き手はこれでいいと思って書いています。読み手は全くついていけません。

おそらく書き手の頭の中はこうです。
「アーティストは歴史を通じてずっと私たちの周りで貢献してくれている。ただ、資金がなければ活動は続けられない人が多いのは事実で、資金が十分でない場合は、その分野のアートが衰退・消失するかもしれないし、一度失われたものは戻せない。だから資金をもっと出すべき。」

読み手が考えていることはこうです。
「なんで数百年アーティストがいる、という理由で今政府がお金をもっと出さなければいけないの? 資金がなければ全員活動できないと書いてあるけど、現状では活動できている人もたくさんいるし、一定割合の人が資金で困っても、さすがに文化は消失しないのでは。これまでも資金豊富ではなかったのに、芸術の範囲は減るどころか、どんどん新しい領域や種類のアートが生まれているし、、、」

これくらいの差があります。読み手は文字通りにしか読みません。ですので、例えば、
they cannot continue working は
a large proportion of artists cannot continue working 等とすべきです

The culture itself may get lost, は
Some genres of art, especially those involve sophisticated artisanship, suffer a great deal of financial hardship. 等とすべきです。

読み手の目線で critical に考えてください。予備知識やイメージが一切ない人が初めて、さっとこの文章を読んで理解できるか?という視点で文章の内容を考えて、書くことが肝要です。英語はうまく書けているのに点数が伸び悩む人の共通点は、「内容が伝わりにくい」です。これが解決できれば高い点数が出てきます。

Writing は 28点がスタンダード

TOEFL iBT で100点を達成している受験者には、Writing セクションでは28点は普通に取れます、という人が多いことに気づきます。私のTOEFL指導キャリアの中で100点を達成された生徒さんには、Writing で26~29点の方が多い印象です。

28点を取った受験者は、最初はどのくらいの点数だったのでしょうか。私の生徒さんを見ると、16~22点の人が多いです。このスコアレンジからでも、ちゃんと練習すれば、高得点を出せるようになります。本当に取れるようになるのだろうか?ではなく、取れるように向上していこう、という意気込みが大事です。(全員ではないですが)多くの受験者にとって、100点を取るためには、稼ぎ頭は Reading と Writing です。稼ぎ頭で稼げない戦いは苦しいです。稼げるところは稼ぎに行く、という前傾姿勢で臨む人と、懐疑的に進む人では上達のスピードが違います。自分に自信をもって進みましょう!
Do it because you can do it and because you have to do it anyway.

Speaking 23点の壁、なんて壁はない

誰が言い始めたのでしょか?このありもしない壁。日本人受験者のSpeaking は 23点という大きな壁があり、それ以上はなかなか取れない、という旨の言葉をよく聞きます。当たり前ですが、試験実施機関のETSは「日本人には、Speaking のスコアで23点以上は出さない」という採点基準は設けていません。実際にこれより高い点数を取っている人もたくさんいます。

そんな壁はありません。もしあるように感じているのであれば、それはあなたが勝手に作っているだけです。そんな壁をいちいち作っていたら、Speaking でスコアを出せる力があるはずなのに点数を出せなくなってしまいます。日本人でも、Speaking 24点、25点、以上も可能ですし、実際に達成している人も多くいます。要するに、すべきことをするのか、しないのか、ということです。そのすべきこと、というのは明確です。

添削を受けフィードバックを反映させる、このスピードこそ命

日本人なのか何人なのか、が点数を確定させる決定要因ではなく、何をどのくらいやっているか・やっていないのか、が点数の決定要因です。やるべき最も大事なことの一つに「添削を受ける」というステップがあります。プロからの添削が最も有効です。高い点数を出すために重要なことをプロは理解しているからです。プロからの添削なく練習を重ねるというのは、家を建てたことがない素人が、大工やデザイナーの助けなく、家をゼロから自分一人で建てるのと同じことです。完成が遅くなり、危険な建物になってしまうように、アウトプットの到達レベルには大きな問題が発生します。その道のプロの示す指針があるのとないのでは全くレベルが違います。添削は受けることを強くお勧めします。

ただし、添削を受けることだけに満足しないようにしましょう。添削を受けたから点数が上がるのではありません。添削でもらったフィードバックを、自分のパフォーマンスに反映できて始めてスコアが上がります。過去形と過去完了形の使い分けの誤りについて指摘を受けたら、次回から同じエラーが起こらないようにしましょう。頭で理解していてもエラーが起こっていては点数は変わりません。フィードバックを自分のものにして変化を生み出しましょう。その変化こそが点数アップの幅になります。

Good luck^^

山内勇樹先生のプロフィール
UCLA(カルフォルニア大学ロサンゼルス校)卒。脳神経科学専攻。留学サポート・語学学習を提供する株式会社Sapiens Sapiens代表講師兼最高責任講師。TOEFL iBT120点、TOEIC L&R TEST 990点、TOEIC SW400点、英検1級(成績優秀者表彰)、ケンブリッジ英検CPE(C2)、通訳翻訳士資格などさまざまな資格・スコアを保有。アメリカ、イギリス、カナダなど世界中の名門大学、大学院、ビジネススクール、法学校に合格者を出し続けている留学のスペシャリスト。企業の英語指導としての顧問、指導実績も多数。高校での客員講師としても授業を行っている。書籍、雑誌、新聞、講演、ワークショップ、動画配信を通じ、TOEFL指導や留学サポートの教育を幅広く提供している。趣味はバスケットボール、登山、神社巡り、流れ星の観測、バーベキュー、マリオカートなど。

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