高橋基治(『TOEIC® L&R テスト 英文読解力のスタートライン』共著者)

・この本ができるきっかけ

以前筆者が教えているTOEIC L&Rの授業でこんなことがありました。
When S(主語)+V(述語動詞)…, S(主語)+V(述語動詞)…の形の文で、文頭のWhenを「いつ」と訳した学生がいたので、whenの品詞は何?と尋ねたら、品詞って?と聞き返されました。「えっ!」。一瞬目が点に。

そして他の受講生の中にもこういう人が多いことに気づいたんです。英文を見たときに、品詞や文型を意識せず、フィーリングで単語だけを左から順に追って、なんとなく意味を理解した気になっている人が。品詞とは単語の機能です。動詞、名詞、形容詞……いくつ言えますか? そして文中で単語を見たとき瞬時にそれがどれにあたるかすぐわかりますか?

文型も同じです。文中のどれがS(主語)で、どれがそれを受けるV(述語動詞)またはC(補語)やO(目的語)で、どれがM(修飾語句)なのかを英文を見たときに瞬時に判断できますか?

ここがしっかりできていないまま、いきなりTOEIC L&Rを受験しようとしている人がたくさんいます。そして、問題集を購入してやってみても、英文が読めないし、日本語の解説を読んで説明されても今一つピンときません。表面的に問題の解き方の「コツ」の知識ばかり増えて、肝心の自力で英文の真意を正確に汲み取る力がつかないまま、何冊も問題集を購入してはやっての繰り返し、というサイクルにはまってしまっている人が多いのではないでしょうか。そのため、いつまでたってもスコアが期待したほど上がらない、というジレンマを抱えている受験生が多数見受けられます。

・TOEIC L&Rテストの約60%は「読む力」が試される

意外と盲点なのが、TOEIC L&RはリスニングパートのPart 3&4も、設問と選択肢は文字で書かれたものを読む必要があるという事実です。リスニングとは言うものの、「聞いて理解する」「読んで理解する」両方の力が要求されています。これは裏を返せば、「読解力」がないと正解にたどり着けないということを意味しています。一度読んで、瞬時に意味をくみ取れる力が必要なのです。まさに、TOEIC L&Rは読んで理解できる力をベースに、作られていると言っても過言ではありません。

・TOEIC L&R学習で大切なこと

ところでTOEIC L&Rテスト攻略で一番大切なことはなんだと思いますか? やれテクニックだ、スピードだと言う前に、目の前の英文1文1文がきちんと読める、これが大前提です。すべてはここから始まります。これをなくしていくらテクニックに走っても意味がありません。特にリーディングパートの英文は、表面的に「わかった」だけでは、正解できない設問も多く、当たり前ですが、ゆっくり読んで読めない、意味が取れないものを速く読んだら読める、ということはあり得ません。英文の間違った解釈をしないためには、単語の知識や用法だけでなく、文法、構文などもきちんと押さえておく必要があります。特にPart 7では英文構成ルールにのっとり、文の前後関係をしっかり捉え、「なんとなく」や「あいまいに」ではなく、正確に読み解ける力が要求されています。

よくPart 7の読解問題の解説に、「本文のここの部分にこう書いてあるから、正解はこれを言い換えた(C)になります」のように書かれています。ところが、肝心の「本文のここの部分」が正確に読み取れていない場合が多々あります。また、「これを言い換えた」の英文も、きちんと読めていない。このように解説の前提になっているところができていないため、苦労している受験者が大勢います。また、「ここは分詞なので、前の名詞である……を修飾します」のような解説を読んでも、そもそも「分詞」自体が何かよくわからず、また「前の名詞である……を修飾します」と言われても、さっぱりなわけです。

そこで、まず最初にやることは、基本の「キ」に立ち返って、英語という言葉のしくみやルール、成り立ちを徹底的に理解しておくことです。片手間にやるのではなく、集中して特化して一気にやることです。これこそが、一見遠回りに見えて実はスコアアップへの近道であり、問題集をやった時に最大の効果が期待できる学習法だと言えるでしょう。初級者だけでなく、スコアが停滞している中級者にもお勧めの方法です。

・本書の特徴

本書では、TOEIC L&R問題の「解き方」というよりは、TOEIC® L&R英文の「読み方」を学びます。まずは、絶対知っておかなければならない、基本的な英文のルールから入り、TOEIC® L&Rに特化した英文を使って、1文1文を正確に解釈するための「読み方」を丁寧にかつ詳しくレクチャーしていきます。

そして、TOEIC L&Rというテストの癖や特徴(文体、語法、語句、表現など)、関連する英語についての豆知識なども随所に盛り込んでいます。それはまるで大学で受ける講義内容が濃縮されたような質、量を誇っています。

その後、1文1文が集まってできたまとまった文章を読むための型を意識した「見方」をTOEIC L&Rに頻出のパッセージを使って解説していきます。



本書をやり終えた後には、TOEIC L&R英文が、正確に、深く、そして速く、効率よく読めるようになっているでしょう。結果、今までとは英文の「見え方」が違ってくるはずです。

本書の解説の特徴:
・TOEIC L&R英文の文、文章の「読み方」をこれでもかと丁寧に徹底解説。
・TOEIC L&Rに使われる英文の癖をこれでもかと丁寧に徹底解説。
・「なんとなく読める」から「正確に、深く、速く読める」へと導く解説。

・おわりに

今までの自分のTOEIC L&R学習を振り返ってみて、小手先の正解探しに始終していませんでしたか? なんとなく問題をやって、なんとなく答え合わせをして、なんとなくやった気になっていませんでしたか? そろそろここら辺で、一旦「なんとなく」は止めて、骨太のしっかりとした英語力を身につけてみませんか。それが、未来のみなさんの目標とするスコアに直結しているのですから。本書がそのお役に立てたなら、筆者たちにとってこれ以上嬉しいことはありません。Slow and steady wins the race.「急がば回れ」

高橋基治先生のプロフィール
東洋英和女学院大学教授。専門分野は英語教育。大学では、入門的な英文法のクラスをはじめ、ビジネス英語やTOEIC対策の講義も行う。特に、ネイティブの視点から見た文法や効率の良い英文の読み方についての指導に力を入れている。その他、留学のための英文ライティング等も指導している。主な著書に『2行でこころが伝わる英会話』(デルタプラス)、共著に『TOEICテスト出まくりキーフレーズ』(コスモピア)、『マンガでおさらい中学英語』(KADOKAWA)他多数。

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